シェロー演出ジークフリート

パトリス・シェロー逝く。今週は彼の演出したジークフリートのDVDを夜なよな見ておりました。ブーレーズ指揮のバイロイド公演の有名なやつですね。このプロダクトは今までいろんなところで語られているので、私が語ったところで新しい話はないんでしょうけど、書いてみます。

ワーグナーのリングのストーリーは、ざっくり言ってしまうと、神々の衰退と人間の隆盛の話じゃないかと理解しております。さらにざっくりと分解してしまうと、2つの勢力のせめぎ合いと言えます。そしてストーリーを再構築すると、2つの勢力はヨーロッパとアメリカでもいいし、地球連邦と宇宙のコロニー群でも言い訳で、ワーグナーの台詞そのままで2つの勢力がせめぎあうドラマが出来てしまうのではないだろうか。(そういえば大阪天満の中華料理屋で「ホイコーローの分解再構築」という料理をテレビで見た事があるけど、とてもおいしそうであった。)シェローの演出は、貴族階級の没落とブルジョアの台頭というモチーフをとり、オペラ演出読み替えの口火を切ったんじゃないかと、思うております。そして、読み替えが徹底しているので、今時の観客を激怒させるようなやつじゃなくて、自然に入っていけます。
 ジークフリートは、CDで聴く気にならないのであるが(4時間もあるし、ソプラノはなかなか出てこないし)、DVDで見ていると面白い。ストーリーはオペラ版のロールプレイングゲームだし、いやRPG自体がたぶんこの楽劇の世界感から来ているのかな。森の中を冒険し、大蛇を打ち負かし、姫を救出して、嫁はんゲットして、まんまRPG。展開は今のドラマ・映画みたいにはスピードがある訳ではないので、4時間じっくりとつきあうことになります。
 このジークフリートの演出は、素直なんじゃないでしょうか。産業革命時代の雰囲気は、ジークフリートではあまり感じられないかな。