正月明けに金沢に旅行に行ってきました。ブログ記事を書くのに大分時間が経ってしまった。観光名所に、美味しい食べ物、いろいろ満喫したけど、素晴らしい建築にも巡りあえた。感銘を受けたのは、谷口吉生設計の鈴木大拙館だ。
谷口吉生は美術館建築の第1人者だ。彼が作り出すシンプルで静的な空間は私の好みでもあり、東京上野の法隆寺宝物館、豊田市美術館、丸亀市の猪熊弦一郎現代美術館などを見てきた。最近はやりの建築はぐねぐね・ガタガタしたものが多いが、まあそれはそれで良いのだけれど、谷口建築はもう圧倒的にユーグリッド幾何学の世界だ。その空間に身をおくと、XYZ軸がびしっと通っていて、背筋が伸びる。いくたびにその徹底的なシンプルさに、すげえとか、うおおとか頭の中が中2になるのである。
今回は鈴木大拙館であります。小規模な建物であるし、行くまでは、旅行のついでに谷口建築を久しぶりにみるかあ、ぐらいの軽い気持ちだった。
もはや観光名所となってしまった金沢21世紀美術館から、10分ほど南にとことこ歩いて行くとたどり着く。前日に金沢に入ったのだけど、北陸の冬の日らしい、どんよりした天気だった。それが、この日の朝この鈴木大拙館にいく間に晴れ間が出てきて清々しい気分になった。
この建築はシンプルな展示空間やそれのアプローチも確かに素晴らしいのだけど、一番目を奪われたのは水盤とそれを取り巻く思索の場所だ。
朝いちばんに、気持ちの良い太陽光線が差し込んできて、水盤に美しい世界が映し出されていた。目の前に見える建物は、思索のための空間だ。そして水盤のまわりを思索のための回廊がとりまいている。
水盤きわの壁が良い視覚効果を出している。
水盤に写る風景を見ていると、なにやらあちら側の世界に行ってしまいそうな気持ちになる。
ここを訪れる人は皆、物思いにふけっているように見える。
私も早速、この思索の空間で物思いにふけってみる。
まあ実際考えていたことは、たいした内容ではなかったが、この空間の中で過ごす時間は悪くないと思った。
軽い気持ちで行ったのであるが、この水盤廻りで有意義な思索の時間を過ごさせていただいた。こぶりだけど、とても気持ちのいい建築だ。観光にもいいんじゃないだろうか。金沢21世紀美術館からも近いし、あちらはポップな世界だけど、それと対比的な鈴木大拙館で静謐なひとときをもつのもいいんじゃないだろうか。