メトのトロイアの人々、上映時間5時間17分の超大作、またしても1000人体制のプロダクションです。
家の外に出たら冷蔵庫の中より寒いし、上映時間長くてけつ痛くなりそうだし、いこか、いくまいか迷ってましたが、行ってきました。日本では上演されたことはないと言うし。冒頭から合唱が続く、続く、こんなに合唱が続くオペラは初めて見ました。こんなに人手がかかっては日本で上演されないのも納得。
オペラの音楽に聴き入るというより、ストーリーを追いながら歴史的な背景を考えておりました。トロイアがギリシア軍に包囲されているところから、物語は始まります。古代都市国家の包囲戦の時は、男達は剣をとり、女達は祈るのです。トロイの木馬の計略にかかり、街は陥落。阿鼻叫喚となり住民は自決、一部の兵士は脱出します。それから兵士達はイタリアを目指してさまよえるトロイア人となる訳ですが、カルタゴ建国の伝説上の女王ディドーのもとでお世話になったり、ロマンスがあったり、すっかり骨抜きになって、オレッチこれでいいや〜となる訳です。
しかし、トロイア戦争で死んだ亡霊はこれを許さない。はよ、イタリアに行かんかいと。世界を支配する礎にならんかいと。亡霊となったトロイアの女王を演じるデボラ・ヴォイドが出てくるんですが、これがめちゃむちゃ怖いです。これでは、石でも、信楽焼の焼き物でもカルタゴを後にしないとあかんと思うはずです。それでトロイア人達はカルタゴをたち、ローマ建国のためにイタリアへ向かうのです。ローマは数百人の男ばかりの集団から始まったとか読んだこともあるので、実際こうゆう集団から発生したのかもしれんなあと思ったしだいです。
いかないでと懇願したカルタゴ女王ディドーは、茫然自失の後にぶち切れ壮絶なアリアでトロイア人達(ローマ)への復讐を誓います。いわば、ローマとカルタゴの死闘、ポエニ戦争の下敷きにしておるんですね。
実際そんなことあるんかいなと、上映中ぶつぶつと考えておりました。伝説とはいえ、いや実はあったんじゃないかと言われるトロイア陥落がBC1200年頃、カルタゴ建国がBC814年頃、ローマの建国はBC753年。物語では陥落後トロイア人達はすぐカルタゴに来ることになっているんでちと苦しいんじゃないかなと思っております。
古代史ってロマンはあるんだけれど、いくら考えても答えが出ないのがもどかしい。古代に思いを馳せるより、明日からの段取りどうしようかとか考えた方がいいのかもしれません。動画はトロイアの人々から美しい二重唱。カルタゴ女王とローマの祖先の二重唱ですな。