ワーグナー〜ニーベルングの指輪

コンサートまでの道すがら、中津から福島までは同じ梅田圏でもとても遠いので、タクシー捕まえたのですが、大阪のタクシーの運ちゃんはめちゃくちゃ喋る。機関銃のように喋ってすいすいと運転するもんだから、まったくすごいもんだ。そのとき、私はあまり喋る方ではないが、ひきづり込まれてしまいました。「シンフォニーホールまでですか。お客さんは、よういきはるんですか。」
「ええ、たまに。」
「よろしいですな。しかしチケット代とか高いんですやろ。2、3万とかするんですやろ」
「そんなことないですよ。今日は4千円ですよ。万超えるのは外タレですよ。」
「は〜外タレですか〜。しかし、あれですな。いいですな。こうゆうコンサートを聴いてめいる訳やね」
「そう め い って しまうんです」
まあ、滅入ることもある・・・

 その日はニーベルングの指輪のコンサート形式。準メルクル指揮、大阪フィル、声楽なし、指揮者対面席でした。これは、15時間のオペラを50分に短縮するので、かなりむちゃなんだけど、指輪組曲と言ってもいい内容でおもろかったです。ラインの黄金ワルキューレジークフリートはそれほど時間をさかずに、神々の黄昏にぐっと比重をおく。この強弱の付け方は効果的だと思ったし、説得力がありました。 冒頭のラインの黄金のプロローグ、この曲めっちゃ好きなんです。様々な楽器が深く静かに音楽を奏で、折り重なって、おおきなうねりを作っていく。マルチ・レイヤー化された音楽。しかし、この日は冒頭のホルンが?。チェロの旋律も耳に届かない(安い席だからか?)。だから、冒頭部はううんとうなってしまったが、尻上がりにどんどん調子が良くなっていきましたよ。
 コンサートの前半はシューマンのピアノ協奏曲で、その時メルクルはコメディアンなのか?と思っていたけど。指輪を振り始めるや、雰囲気ががらっと変わり大フィルをドライヴ、これはめたくたにかっちょ宜しい。これとワーグナーの人生をも狂わす分厚いオーケストレーションが絡まるのだから、もうなにおや言わんかです。神々の黄昏の3連発、ジークフリートのラインへの旅、葬送行進曲、ブリュンヒルデの自己犠牲といやあもう素晴らしいです。これはドイツ文明の極地なのだということを思い知らされました。Bravo!
 思えば、メルクルさんがトーキョーリングの初演指揮者だった訳で、再演してほしいですね〜。
 動画は、違う人ですが、ジークフリートの葬送行進曲で余韻に浸ってました。1988サントリーホール